【芯の少し上が一番飛ぶ】のセオリーは通じない!?Qi10 MAX

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【芯の少し上が一番飛ぶ】のセオリーは通じない!?Qi10 MAX
最新の10Kドライバーは、フェース上めが飛ぶという従来のセオリーが通じなくなっているということは驚きですね。
大慣性モーメントが大きなトレンドとなっているということは、スイングの安定性や飛距離に影響を与える要素が変わってきているのかもしれません。

「芯の少し上が一番飛ぶ」のセオリーは通じない!?
知っておくべき最新「10K」ドライバーの特性とは?

「フェース上め」が飛ぶというセオリーが通じなくなった

 今春発売のドライバーたちは、大慣性モーメントが大きなトレンドとなっており、「10K」つまり上下左右の慣性モーメントを合計して1万g・cm2を超えるものも出てきています。

 このドライバーの進化について、ゴルフフィールズユニオンゴルフ店の店長でクラブマニアとして知られる小倉勇人さんに聞いてみました。

「2024年モデルのドライバーをひと通り打ってみて、本当に大きな進化を感じます。それと同時に大慣性モーメント化がさらに進んだことで、クラブの特性に少し変化が出てきたように感じています」

大人気のテーラーメイドの「Qi10 MAX」のフェース面
大人気のテーラーメイドの「Qi10 MAX」のフェース面

「それはタテの慣性モーメントの極大化による、ギヤ効果の減少です。慣性モーメントの左右値はすでにルール規制のほぼ最大値に達していますので、トータルの慣性モーメントを大きくするために、最新ドライバーは上下方向の慣性モーメントを増やしています。この効果によって、今後ドライバーの飛ばし方が変わってくるかもしれません」(小倉店長)

 小倉店長の言う「ギヤ効果」とは、打点とヘッドの重心位置(≒芯)のズレによるスピン量の変化です。

 たとえばヘッドの芯よりも上でボールを打つと、ヘッドにはロフトが増えるように上を向くモーメントが働きます。

 この働きの反作用で、ボールにはその反対方向のモーメントが発生するので、バックスピンが減る現象が起こります。ボールとヘッドが噛み合った歯車のようになることから「ギヤ効果」と呼ばれます。

「ドライバーは、『芯の少し上で打つと飛ぶ』といわれているのはご存じでしょうか。芯を外すとそのぶんボール初速は少し落ちますが、芯より少しだけ上めで打てれば、ギヤ効果による打ち出し角アップとバックスピン減少が初速低下を上回る効果を発揮して、ビッグボールで飛ばせるのがその理由です」

「『10K』級のドライバーは、そのタテのギヤ効果が小さいため、『フェースの上め』で打ってもすごい飛びが出ることがないように感じるのです」(小倉店長)

 もちろんこれは、必ずしもデメリットというわけではありません。大慣性モーメント化によってフェースのどこに当たっても同じような飛びが得られるわけですから、打点のバラつきがあっても飛距離の平均値はアップします。多くのアマチュアにとっては、むしろこれは大きなメリットでしょう。

 平均値がアップしたことと、それに伴ってヘッド本来の能力を上回るような「1発の飛び」が出にくくなっていることのどちらをプラスと考え、マイナスと考えるかは、個々のプレーヤー次第です。

 しかしそれを踏まえて「フェース上め」ではなくど真ん中で打つことがいちばんいい結果をもたらすようになったことは、知っておくべきかもしれません。

大慣性モーメントでもコントロールできるヘッドが登場

 また小倉店長は、「10K」を謳っているドライバーの一つ、テーラーメイドの「Qi10 MAX」について、従来の大慣性モーメントドライバーにはないフィーリングがあり、大きな進化ではないかといいます。

「10K」ドライバーとして人気を博しているテーラーメイドの「Qi10 MAX」とピンの「G430 MAX 10K」

「10K」ドライバーとして人気を博しているテーラーメイドの「Qi10 MAX」とピンの「G430 MAX 10K」

「いままでの大慣性モーメントドライバーは、ほぼ例外なくフェースのローテーションがしにくく、右方向にすっぽ抜けるような球が出がちでした。私のようなフェースローテーションを多く使うスイングのゴルファーにとっては、それは『振り心地の悪さ』『操作しにくさ』を感じる大きなデメリットでした」

「ですが『Qi10 MAX』は、その右に滑るような球が出ないんです。すごく振り心地がいい。おそらく、大慣性モーメントなのに、重心距離が短めなのでしょう。こういうヘッドが可能になったのは、重心設計技術の大きな進化だと私は感じました」(小倉店長)

 テーラーメイドが採用しているカーボンフェースは、従来のチタンフェースよりもヘッド前方にあるフェースのパーツを軽く作れます。そのため、それほど極端な重心設計にしなくても大きな慣性モーメントを得られ、重心距離も短めに設計することができたのではないかというのが小倉店長の推測です。

 かつてヘッド体積460ccのドライバーが出始めたころも、そのヘッドサイズで製造するのが精一杯で重心設計に余裕がありませんでした。そのため扱いにくいドライバーが多くありましたが、いまではそんなことはありません。

 慣性モーメント設計に関しても、今後の設計技術の進化によって操作性を兼ね備えたモデルが出現する可能性は大きいのかもしれません。

「同じ『10K』を売りにしているピンの『G430 MAX 10K』は、『G430 MAX』同様重心距離が長そうな振り心地でしたが、フェースローテーションをあまり使わずにシンプルに振る人にとっては、そちらのほうが振りやすく感じることもあると思います。その意味では、この『振り心地』は絶対的な性能を意味しません」

「しかし大慣性モーメントヘッドは『G430 MAX 10K』的なものばかりだった中に、『Qi10 MAX』のようなモデルが登場したことで、今後どちらのタイプも選べるような選択肢が増えていくのは、すごくよいことだと思います」(小倉店長)

 今年ゴルフ界を席巻している「10K」、たんなるトレンドではなく、今後のクラブの進化を大きく左右するトピックとして、注目していく価値がありそうです。

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