マラソンや長距離レースの最中、突然胃がキリキリと痛み、時には痙攣するような感覚に襲われることがあります。特にレース後半、30kmを過ぎたあたりで起こりやすく、「このまま走れないかもしれない」と不安になるランナーは少なくありません。実際、ランニングコミュニティや掲示板でも「胃痙攣でDNF(途中棄権)しそうになった」「走りながら治す方法が知りたい」といった声が多く見られます。この記事では、マラソン中に胃痙攣が起きたときに、その場で試せる応急処置と、そもそも起こさないための予防策をまとめました。緊急時の判断材料として、ぜひレース前に目を通してください。
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なぜマラソン中に胃痙攣が起こるのか
胃痙攣は、胃の平滑筋が過剰に収縮してしまう状態です。ランニング中に起こる原因は一つではなく、複数の要素が重なることで引き起こされると考えられています。ここでは主な要因を整理します。
血流の変化と消化器系への負担
走り続けると、筋肉へ優先的に血液が送られるため、消化管への血流が減少します。その結果、胃の動きが鈍くなり、内容物が停滞しやすくなります。そこに補給食や水分が入ると、胃が過剰に反応して痙攣を起こすことがあります。特に、レース中の緊張や脱水が重なると、この傾向が強まります。
呼吸の乱れと横隔膜の関与
ランニングフォームが崩れたり、呼吸が浅くなったりすると、横隔膜が緊張しやすくなります。横隔膜は胃のすぐ上に位置するため、その緊張が胃を刺激し、痙攣を誘発する可能性があります。特に、普段の練習で腹式呼吸ができていないランナーは、レース後半に呼吸が乱れやすく、リスクが高まります。
補給食やドリンクの影響
レース中に摂取するジェルやスポーツドリンクが、胃に合わないケースもよくあります。濃度が高すぎる糖質や、冷たい飲み物が胃の粘膜を刺激し、痙攣を引き起こすことがあります。また、空腹状態でカフェイン入りのジェルを摂ると、胃酸過多になって痛みが出ることもあります。
冷えや気温差
雨天や気温が低いレースでは、お腹まわりが冷えて胃腸の動きが悪くなります。さらに、冷たい風を吸い込むことで胃が冷やされ、痙攣が起こりやすくなると言われています。ウエスト周りを保温することの重要性は、意外と見落とされがちです。
精神的な緊張やストレス
レース本番の緊張や、タイムへのプレッシャーが自律神経のバランスを崩し、胃腸の動きを乱すこともあります。いわゆる「お腹が痛くなる」状態が、痙攣という形で現れるケースも少なくありません。
走りながらできる応急処置:まず試すべき5つの方法
胃痙攣が起きてしまったら、無理に走り続けると症状が悪化し、最悪の場合リタイアにつながります。しかし、すぐに止まるわけにもいかないレース中でも、走りながら試せる対処法があります。以下の方法を、症状や状況に応じて試してください。
1. ペースを落とし、呼吸を整える
最も基本的で効果が高いのは、ペースダウンです。キロ30秒から1分程度落とし、会話ができるくらいの楽なペースに切り替えます。同時に、息を吐くことを意識した深呼吸を繰り返します。鼻から吸って、口からゆっくりと長く吐く「4秒吸って6秒吐く」リズムが理想的です。吐くときに横隔膜が緩み、胃への圧迫が軽減されます。
2. 姿勢を正し、上体をやや起こす
痛みに耐えようと前かがみになると、腹部が圧迫されて余計に痙攣が強まることがあります。意識的に背筋を伸ばし、骨盤を立てるようなイメージで走ります。また、両手を頭の後ろで組み、胸を開くようにして走ると、腹部の圧迫がとれて楽になることがあります。これは一時的な対処ですが、数分続けると効果を感じるランナーも多いです。
3. 患部を温める、または軽く圧迫する
冷えが原因と思われる場合は、手のひらでお腹を温めながら走ります。レース中にカイロを持っているなら、胃のあたりに当てると効果的です。逆に、痙攣が強い場合は、手で胃の部分を軽く圧迫し、固定するようにすると痛みが和らぐことがあります。ただし、強く押しすぎると逆効果なので、あくまで「支える」程度にしてください。
4. 水分を少量ずつ、ぬるま湯があれば最適
給水所では、冷たい水ではなく、可能であれば常温かぬるま湯を選びます。冷たい飲み物は胃を刺激するため、症状が悪化する可能性があります。また、一度に大量に飲まず、一口含んでゆっくりと飲み込むようにします。スポーツドリンクは糖分や酸味が刺激になる場合があるので、水で薄めるか、水だけにする方が無難です。
5. 歩きを交えて、胃の内容物を落ち着かせる
どうしても痛みが治まらないときは、思い切って歩きに切り替えます。歩きながら深呼吸を続け、お腹をさすったり、軽く体をひねったりして、胃の周りの緊張をほぐします。数分歩くだけで回復し、再び走り出せるケースは珍しくありません。タイムロスを恐れずに、早めに歩きを入れることが結果的に速い完走につながります。
レース中にやってはいけないこと
応急処置と同じくらい、悪化させる行動を知っておくことも重要です。以下の行為は、胃痙攣をさらにひどくする可能性があるため、避けてください。
無理に補給を続ける
「エネルギーが切れるから」と、痛みがあるのにジェルやバナナを流し込むのは危険です。胃が受け付けず、嘔吐やさらなる痙攣を招きます。補給は、症状が完全に落ち着いてから、少量ずつ試すようにします。
痛み止めを自己判断で服用する
レース中に市販の鎮痛剤を飲むことは、胃粘膜を荒らし、症状を悪化させるリスクがあります。特に、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は胃腸障害を起こしやすいため、避けるべきです。どうしても必要な場合は、事前に医師に相談しておきましょう。
そのままハイペースを維持する
痛みを我慢してペースを落とさないと、呼吸がさらに乱れ、横隔膜の緊張が強まります。胃痙攣は「体からのSOS」と捉え、まずはペースを緩めることを最優先にしてください。
胃痙攣を予防するために:レース前・レース中にできること
胃痙攣は、事前の準備でかなり防ぐことができます。ここでは、レース前日から当日、レース中までの具体的な予防策を紹介します。
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レース前日・当日朝の食事と水分
前日は、脂っこいものや食物繊維の多い食事を避け、消化の良い炭水化物を中心にします。当日朝は、レース3時間前までに、おにぎりやバナナ、うどんなど、自分が食べ慣れたものを軽く済ませます。水分は、レース直前までに500ml程度を少しずつ摂り、スタート直前は控えめにします。
補給食の選び方と練習でのテスト
本番で使うジェルやドリンクは、必ず練習で試しておきます。30km走などのロング走で、実際にレースペースで摂取し、胃腸の反応を確認します。胃が弱いと感じるなら、固形物よりも液体タイプ、またはジェルを薄めて摂るなどの工夫が必要です。カフェイン入りのものは、空腹時を避け、少量から試します。
呼吸法の習得とフォーム改善
普段のジョギングから、腹式呼吸を意識します。息を吐き切ることで、自然と吸気が深くなります。また、猫背や反り腰など、腹部を圧迫するフォームは修正が必要です。体幹を鍛え、骨盤を安定させることで、横隔膜への負担が減り、胃痙攣の予防につながります。
腹巻きやウエストウォーマーで冷え対策
気温が低い日や雨のレースでは、薄手の腹巻きやウエストウォーマーを着用します。最近は、ランニング用に設計された通気性の良い製品もあります。冷えは胃腸の動きを鈍らせるため、特に後半の痙攣リスクを下げるのに効果的です。
レース中の補給計画を立てる
「何kmで何を摂るか」をあらかじめ決めておき、その通りに実行します。空腹になりすぎると胃酸が過剰に出るため、早め早めの補給が基本です。ただし、胃の調子が悪いときは、無理に計画を守らず、水だけにするなど柔軟に対応します。
胃痙攣が起きたときの判断フロー:続行か、棄権か
走りながらの対処で改善すれば、そのままレースを続けられますが、次のような症状がある場合は、無理をせず医療スタッフの助けを求めてください。
痛みが増していき、歩くのも辛い
冷や汗やめまい、吐き気を伴う
血便や吐血がある(極めてまれですが、重大なサインです)
水分を受け付けず、脱水の兆候がある
レースを棄権することは勇気のいる決断ですが、体の安全が最優先です。胃痙攣が単なる一時的な不調ではなく、消化管の虚血や熱中症のサインである可能性もゼロではありません。迷ったときは、エイドステーションのスタッフに相談しましょう。
実際にあった胃痙攣の体験談と対処例(一般ランナーのケースから)
ここでは、ランニングフォーラムやSNSで共有されている、実際の胃痙攣への対処例を紹介します。個人の体験ですが、同じような状況で役立つヒントがあるはずです。
ケース1:30km地点で突然の胃痛、歩きと深呼吸で復活
ある市民ランナーは、フルマラソンの30km過ぎで急に胃が痙攣し、立ち止まりそうになったそうです。しかし、すぐに歩きに切り替え、両手を頭の後ろに組んで深呼吸を2分間続けたところ、痛みが和らぎ、その後は予定より遅れたものの完走できたとのこと。この方は「無理に走り続けず、歩いて呼吸を整えたのが良かった」と振り返っています。
ケース2:冷たいスポーツドリンクが引き金、水に切り替えて回復
別のランナーは、給水所で冷たいスポーツドリンクを一気に飲んだ直後に胃痙攣が発生。その後は水だけを少量ずつ摂るようにし、ペースを落として5kmほど走ると症状が消えたと言います。この経験から、レース中は常に水とスポーツドリンクの両方を持ち、胃の様子を見ながら選ぶようにしているそうです。
ケース3:腹巻きの着用で後半の胃痙攣がなくなった
冬のレースで毎回30km以降に胃痙攣を起こしていたランナーが、薄手の腹巻きを着用するようになってからは、一度も症状が出なくなったという報告もあります。冷えが主な原因だったようで、対策の重要性を示す好例です。
よくある質問(FAQ)
胃痙攣が起きたら、すぐに止まった方がいいですか?
まずはペースを大幅に落とし、呼吸を整えながら様子を見てください。痛みが強く、走るのが困難な場合は、歩くか一旦立ち止まってストレッチをします。無理に走り続けると悪化するため、早めの対処が肝心です。
レース中に胃薬を飲んでも大丈夫ですか?
市販の胃薬をレース中に服用することは、一般的には推奨されません。特に、痛み止め成分が入っているものは胃に負担をかける可能性があります。どうしても持参したい場合は、事前にかかりつけ医や薬剤師に相談し、自分に合ったものを練習で試しておくことが必須です。
胃痙攣を予防するのに効果的な飲み物はありますか?
レース中は、常温の水か、薄めたスポーツドリンクが無難です。冷たい飲み物や炭酸飲料、カフェインが多い飲料は避けます。また、胃腸に優しいとされるハーブティー(カモミールなど)をレース前に飲むランナーもいますが、本番で試す前に練習で確認してください。
レース前日や当日朝に避けるべき食べ物は?
脂っこい食事、生野菜や海藻などの食物繊維が多すぎるもの、香辛料の強い料理は避けます。また、乳製品でお腹が緩くなる人は、前日から控えた方が良いでしょう。消化の良い炭水化物を中心に、食べ慣れたメニューが安心です。
胃痙攣と横隔膜の痙攣(いわゆる脇腹痛)の見分け方は?
胃痙攣はみぞおち付近の内側がキリキリと痛むのに対し、横隔膜の痙攣は肋骨の下あたりの筋肉がピクピクと引きつるような痛みが特徴です。ただし、両方を同時に感じることもあり、明確な区別が難しい場合もあります。どちらにせよ、呼吸を整え、ペースを落とす対処法は共通しています。
練習では平気なのに、レース本番で胃痙攣が起こるのはなぜですか?
レース特有の緊張や、普段より速いペース、気温の変化、給水所での飲み方の違いなど、複合的な要因が考えられます。特に、アドレナリンの影響で胃腸の動きが抑制されることや、練習より長い距離での疲労蓄積が影響します。本番を想定したシミュレーション練習を重ねることが予防につながります。
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まとめ:胃痙攣は「早めのペースダウン」と「呼吸」で乗り切る
マラソン中の胃痙攣は、突然の痛みでレースを台無しにしてしまう厄介なトラブルです。しかし、適切な応急処置を知っていれば、その場で回復させて走り続けられる可能性が高まります。最も大切なのは、痛みを感じたらすぐにペースを落とし、深い呼吸で横隔膜と胃の緊張をほぐすことです。そして、冷たい飲み物を避け、患部を温めるなどの工夫も有効です。
予防の面では、普段の練習から補給食のテストや腹式呼吸、冷え対策を徹底することが、本番での胃痙攣リスクを大幅に下げます。もし走りながらの対処で改善しない場合や、痛みが増すようであれば、迷わず医療スタッフの助けを借りてください。自分の体の声を聞き、安全にレースを楽しむことが、何よりも大切です。この記事が、あなたの次のレースでお役に立てば幸いです。
