ただ、楽しいだけじゃなかった。エントリーの難しさやレース中の失敗、事前に知っておけばよかったと思うことも山ほどある。この記事では、実際に走った自分の体験を軸に、これから大阪マラソンを目指す人に向けて、包み隠さず伝えていきたい。
ランニング・マンEmilia Jones
抽選倍率は約4倍。エントリーのリアルな話
定員28,420人のフルマラソンに対し、一般枠の抽選倍率は例年4〜5倍と言われている。僕も過去に一度、あっさり落選した経験がある。当選通知が届いたときは素直に嬉しかったし、参加料16,000円をすぐに支払った。
ただ、この抽選、実はちょっとした作戦がある。僕の周囲で当選しているランナーに聞くと、エントリー開始直後の数日間を避け、申込期間の中盤から終盤にかけて申し込んだ人が多い。確証はないが、あまり初日に殺到しない方がいいのかもしれない。それでも外れるときは外れるので、過度な期待は禁物だ。
どうしても出たい人には、チャリティランナー枠という手がある。寄付額は10万円以上と敷居が高いが、出走権は確実に手に入る。実際、僕の友人は2年連続でこの枠を使って走っていて、「寄付する価値は十分にある」と言い切っていた。
また、2026年大会は720〈なにわ〉マラソンという7.2kmの種目も同時開催されていて、こちらはフルより当選しやすい印象がある。家族や友人と一緒に参加したい人には狙い目かもしれない。
大会前日、EXPOで感じたただならぬ熱気
受付を兼ねた大阪マラソンEXPOが、インテックス大阪で開かれていた。前日に行ったのだが、会場に着いた瞬間から空気が違う。明日走るんだという期待と緊張が入り混じった人々でごった返し、ブースごとに長い列ができていた。
僕が特に印象に残っているのは、公式スポンサーのブースで行われていた応援イベントだ。スタッフが6人ほど集まり、「がんばってください!」と大声でランナーを見送るコーナーがあった。たかが声援と思っていたが、本気で応援されるとぐっとくるものがある。自分のために言ってくれている、その事実がじわじわ効いてくるのだ。
ナンバーカードと計測チップを受け取り、その後は梅田のホテルに戻って静かに過ごした。夕食はうどんとおにぎりで炭水化物をしっかり摂った。緊張で眠れないかと思ったが、意外とぐっすり眠れたのは、前日に歩き回って疲れていたからだろう。
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スタートからゴールまで。41kmの正直な記録
当日の朝、少し冷え込んだが走るにはちょうどいい気温だった。大阪城公園に近いホテルを取っていたので、荷物預けもスムーズに済ませられた。
号砲が鳴ってからスタートラインを越えるまで、なんと15分近くかかった。さすが3万人規模の大会である。御堂筋に入ると、ビルの谷間を埋め尽くすように人が立っていて、手を振ってくれる。中学生くらいの子が「ファイト!」と叫んでいたのが聞こえて、自然とペースが上がりそうになった。ここは抑えどころだ。
10km地点までは順調だった。道幅が広くて走りやすい。東京マラソンと比べると、序盤の混雑が比較的早く解消される気がする。20kmを過ぎ、中之島を折り返すあたりでハーフ。タイムは1時間50分ほどで、自分としては悪くないペースだった。
しかし、問題は30km以降に待っていた。名物の給食ステーション「まいどエイド」が32.8km地点に現れたのだ。たこ焼き、からあげ、コロッケがずらりと並び、ボランティアの方が「食べていってやー!」と大阪弁で声をかけてくる。空腹もピークだった僕は、ついたこ焼き2個とコロッケを一度にほおばった。これが失敗だった。
走り出してすぐに胃がもたれ始め、35kmでは軽い吐き気までしてきた。揚げ物を一度に入れたのがよくなかったのだろう。沿道の「おっちゃん、がんばれ!」の声も遠くに聞こえ、本当にやめようかと思った。結局、次の給水所で水を多めに飲み、歩いたり走ったりを繰り返してしのいだ。まいどエイドの誘惑は危険だ。一口サイズにして、少しずつ味わうのが正解だったと痛感した。
40kmを過ぎて大阪城が見えたときは、正直泣きそうになった。フィニッシュゲートをくぐった瞬間、脚の痛みも胃のもたれも一気に吹き飛ぶ。完走メダルを首にかけてもらい、渡された塩むすびのうまかったこと。あの味は一生忘れない。
沿道の応援と運営面。ここが本当にすごかった
今回、特に心に残ったのは応援の多彩さだ。公式の「ランナー盛上げ隊!」が8ヶ所に配置されていて、和太鼓やチアリーディング、沖縄民謡まで飛び出す始末。通りかかるたびに、こっちまで元気が湧いてき た。地元の子どもたちが描いた応援ボードもあちこちに貼ってあり、「知らん人やけど、がんばれ」という大阪らしいメッセージに 思わず笑ってしまった。
トイレが洋式だったのも、地味に大きい。フルマラソンの後半は脚ががくがくで、和式にしゃがむのが本当につらい。洋式トイレがちゃんと設置されているだけで、どれだけありがたいか。これも「おもてなし」の一つだと感じた。
荷物預けと受け取りは非常にスムーズだった。以前は混雑して時間がかかったらしいが、2026年大会では改善されていた。ゴール後にすぐ荷物を受け取れて、着替えもスムーズに済んだのはありがたい。
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こんな人に大阪マラソンは向いている
この大会は、記録を真剣に狙う上級者よりも、むしろ大会そのものを楽しみたい人に向いていると思う。フラットなコースなのでタイムは出しやすいが、御堂筋の景色や沿道の応援を味わいながら走るのがベストな楽しみ方だ。初めてフルマラソンに挑戦する人にもおすすめできる。あの熱気が、苦しい終盤の大きな支えになるからだ。
逆に、静かに集中して走りたい人は不向きかもしれない。どこまでもにぎやかで、孤独に浸る暇はほとんどない。一人で淡々と走りたいタイプのランナーは、物足りなさを感じるかもしれない。ただ僕は、あの喧騒に何度も救われたので、これが大阪マラソンの本質なのだと思う。
来年こそは、まいどエイドで揚げ物を欲張らない。そしてできれば、もう少し速く走って、大阪城公園でゆっくり肉吸いを味わいたい。大阪マラソンは、リピーターが多いのもうなずける。走り終えた翌日には、もう次の抽選が待ち遠しくなっていた。
