近年のフットボール界において、急速に存在感を増したゴールキーパーにおける「足元の技術」。フィールドプレイヤーの一人として攻撃の組み立てに参加することが称賛される現代において、欧州でもプレー経験のあるヴィッセル神戸GK権田修一はその風潮に静かな違和感を抱いている。現場で戦うプレーヤーだからこそ見えている、本質的なゴールキーパー論に迫る。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小西優介/全5回の2回目)
「ゴールキーパーの本質とは何か」。
戦術の高度化に伴い、日本国内でも「足元が上手いキーパー」を重宝する傾向は年々強まっている。しかし、権田の捉え方は極めて冷静であり、どこか批判的ですらある。
「『ビルドアップが』『足元が』とここまで言っているのは、実は日本だけなんじゃないかとずっと思っています。もちろん、足元の技術があるに越したことはありませんし、現代サッカーにおいて必要な要素であることは間違いありません。ですが、世界を見渡した時に、どんなにビルドアップが上手であっても、肝心のシュートを止められないキーパーが評価されることは絶対にないんです」
権田が危惧しているのは、育成年代からプロに至るまで、評価の軸足が「ゴールを守ること」から揺らいでしまっている日本の現状だ。
「特に若い年代で、シュートを止める技術よりもビルドアップの巧みさで評価され、試合に使われている選手を見ると、逆にかわいそうだと思ってしまいます。なぜなら、トップチームに行こうと思ったり、プロや海外のトップレベルに上がった時、シュートが止められないキーパーは真っ先に評価されなくなってしまうからです。本質的な部分を履き違えてはいけないと感じています」
権田は「僕の考えですが、キーパー以外のフィールドプレイヤー10人だけでビルドアップを完結させられないから、キーパーに頼っている面があるのではないでしょうか。本来、ピッチ上の攻防はフィールドだけで見れば10対10のイーブンです。そこで局面を剥がせないからといって、一番後ろにいるキーパーを組み込むことを『前提』として考えてしまうのは、少し論点がずれている気がします」と、背景にある構造的な課題を鋭く指摘する。
キーパーが組み立てに加わることで生まれる「プラス1」の優位性は、あくまで戦術的な選択肢の一つに過ぎず、「キーパーがいないとボールが回らないというベースで物事を捉えてしまうと、『キーパーは足元がないと試合に出られない』という極端な話になってしまう。けれど、ゴールキーパーは相手のゴールから最も離れた位置に立ち、チームで唯一手を使うことが許された特別なポジションです。その本分を忘れてはいけないと思っています」と、主張する。
さらに欧州との違いについても指摘。権田はSVホルン(オーストリア)、ポルティモネンセ(ポルトガル)、デブレツェニ(ハンガリー)と海外3か国でのプレー経験を持ち、日本代表としても世界のトップレベルと対峙してきたなか、ヨーロッパの過酷なプレッシャーのなかで痛感したのは、評価基準のシンプルさとシビアさだった。
「海外のトップレベルになればなるほど、監督の命運は毎試合の結果に直結します。『失敗してもいいから後ろから作ってくれ』なんて言って結果を逃せばクビになりますし、結果が残せない監督はクビになるスピードが圧倒的に早い。だからこそ、指揮官がGKに求める第一条件は常に『チームを勝たせること』、つまり失点しないことなんです」

