フルマラソンに挑戦するランナーにとって、エネルギー補給は避けて通れない課題だ。特に30kmを過ぎたあたりから、多くのランナーが「ジェルの甘さが気持ち悪くなって飲めない」「味に飽きてしまい、補給のたびにストレスを感じる」という悩みに直面する。これは単なる好き嫌いの問題ではなく、長時間の運動で味覚が敏感になり、濃厚な甘みが胃腸への負担として感じられる生理的な反応でもある。実際、海外のランニングコミュニティでも「I can't stomach gels after 20km, the sweetness makes me gag.(20kmを過ぎるとジェルを受け付けなくなり、甘さで吐き気がする)」といった声が頻繁に上がっている。
この記事では、GU、SIS(Science in Sport)、Maurtenという主要3ブランドの特性を踏まえ、レース後半までストレスなく補給を続けるための「味のローテーション」戦略を具体的に解説する。単にフレーバーを変えるだけでなく、ブランドごとのテクスチャーや甘さの質の違いを活かした組み方、カフェイン入りとカフェインレスの使い分け、そして実際のレースで失敗しないための事前準備までを網羅する。
MAURTEN GEL100 ジェル100 1袋 スポーツ飲料 エナジードリンク カーボローディング エネルギー補給 炭水化物 マラソン 駅伝 サッカー 登山 アスリート 40グラム (x 1)MAURTEN
なぜジェルの味に飽きるのか? そのメカニズムを知る
マラソン中にジェルの味が嫌になる理由は、主に以下の3つの要因が重なっていると考えられる。
1. 味覚の感度変化:長時間の運動により、口の中が乾燥し、唾液の分泌が減少する。これにより、甘味を強く感じやすくなり、通常時よりも味が濃く感じられる。
2. 胃腸の疲労:走行中の振動と血流の変化で胃腸の働きが低下し、濃厚な糖質を受け付けにくくなる。特に高濃度のマルトデキストリンを主成分とするジェルは、胃に重く感じられることがある。
3. 心理的な飽き:同じ味を繰り返し摂取することで、脳が「もう十分」と拒否反応を示す。これは単調な味覚刺激に対する慣れと、報酬系の鈍化が関係していると言われる。
これらの要因を踏まえると、味のローテーションは単に「飽きを防ぐ」だけでなく、胃腸への負担を分散させ、後半のエネルギー吸収効率を維持する上でも理にかなった戦略だと言える。
主要3ブランドの味とテクスチャーを徹底比較
まずは、GU、SIS、Maurtenの基本的な特徴を理解しておこう。ブランドごとに甘さの質やテクスチャーが大きく異なるため、ローテーションの土台としてこの違いを押さえておくことが重要だ。
| ブランド | テクスチャー | 甘さの質 | 主なフレーバー例 | 特徴 |
| — | — | — | — | — |
| GU | やや固めのジェル状 | 濃厚で強い甘み | チョコレートアウトレイジ、ソルティッドキャラメル、バニラビーン | フレーバーが豊富で、塩分を含むものも多い。カフェイン入りラインナップも充実。 |
| SIS (Science in Sport) | さらさらした液体に近いジェル | 比較的あっさり、フルーティー | アップル、オレンジ、トロピカル | 水分を多く含み、飲みやすい。胃に軽く、後半でも受け付けやすいと評判。 |
| Maurten | ゼリー状のハイドロゲル | ほとんど甘みを感じない、無味に近い | Gel 100(無味)、Gel 100 Caf 100(無味+カフェイン) | 甘さが極めて弱く、味に飽きる心配が少ない。テクスチャーが独特で、好みが分かれる場合もある。 |
各ブランドの公式情報や販売ページから確認できる範囲では、MaurtenのGel 100は1個あたり920円(税込)、Gel 100 Caf 100は990円(税込)で販売されている。SISやGUの価格は販売店やセット購入によって変動するため、購入前に各公式または正規代理店のページで最新の価格を確認することを推奨する。
味ローテーションの基本原則:甘さの強度とテクスチャーで組み立てる
味のローテーションを成功させるには、以下の3つの軸でジェルを選び、順番を決めることが有効だ。
1. 甘さの強度を徐々に下げる
レース序盤は濃いめの甘さでも受け入れやすいが、後半になるほどあっさりした味や無味に近いものが欲しくなる。そのため、次のような流れを基本とする。
前半(0〜20km):GUのフルーティー系やキャラメル系など、比較的甘みの強いフレーバー。エネルギーをしっかり補給し、メンタル的にも「ご褒美」感を得られる。
中盤(20〜30km):SISのアップルやトロピカルなど、さっぱりしたフルーツ系。水分量が多く、胃腸への負担が少ない。
後半(30km〜ゴール):Maurtenの無味ジェル、またはSISのオレンジなど、甘さ控えめなもの。甘みを感じたくない時間帯にはMaurtenが特に有効。
2. テクスチャーに変化をつける
同じような口当たりのジェルを続けると、食感への飽きも生じる。GUのやや固めのジェル、SISのサラサラした液体タイプ、Maurtenのゼリー状ハイドロゲルを順に使うことで、口の中の刺激をリフレッシュできる。
3. カフェインの有無でアクセントをつける
カフェイン入りジェルは覚醒効果や脂肪燃焼促進が期待できるが、胃腸への刺激が強い場合もある。カフェイン入りはレース中盤の「ここで踏ん張りたい」というポイントで1〜2回使用し、それ以外はカフェインレスにするなど、メリハリをつけると良い。
実践的なローテーションパターン例(フルマラソン想定)
以下に、補給ポイントごとの具体的な組み合わせ例を示す。これはあくまで一例であり、個人の好みや胃腸の強さに応じて調整してほしい。
パターンA:甘さに敏感なランナー向け(Maurten中心)
| 距離(km) | 使用ジェル | ポイント |
| — | — | — |
| スタート前 | SIS アップル(カフェインレス) | 胃に軽く、スタート直後の血糖値を安定させる |
| 10km | Maurten Gel 100 | 無味で飲みやすく、早い段階から胃腸を守る |
| 20km | Maurten Gel 100 Caf 100 | カフェインで中盤の集中力を高める |
| 27km | SIS オレンジ | さっぱりした柑橘系で気分転換 |
| 33km | Maurten Gel 100 | 甘さゼロで、最もきつい時間帯を乗り切る |
| 38km | Maurten Gel 100 Caf 100(またはGU ソルティッドキャラメル) | 最後の力を引き出す。塩分補給も兼ねるならGU |
パターンB:味のバリエーションを楽しみたいランナー向け(GU+SIS混合)
| 距離(km) | 使用ジェル | ポイント |
| — | — | — |
| スタート前 | GU バニラビーン | クリーミーな甘さでスタート前の安心感を得る |
| 12km | SIS トロピカル | フルーティーで飲みやすく、気分を上げる |
| 20km | GU ソルティッドキャラメル(カフェイン入り) | 塩気と甘さのバランスが良く、中盤のアクセントに |
| 28km | SIS アップル | あっさりしたリンゴ味で胃をリセット |
| 34km | GU チョコレートアウトレイジ(カフェイン入り) | カフェインと濃厚な味で終盤のエネルギーを注入 |
| 40km | Maurten Gel 100 | 最後の補給は無味で確実に摂取 |
これらのパターンは、実際のレースで多くのランナーが試行錯誤してきた組み合わせを参考にしている。重要なのは、自分にとって「後半でも飲める味」を事前に見極めておくことだ。
Sis Who Runs ハーフマラソン ランニング シスターランナー おもしろユーモア TシャツSprinting Witty Funny Sayings Sports Joke
ローテーションを成功させるための事前準備と注意点
練習で必ず試すこと
本番で初めての組み合わせを試すのは非常にリスクが高い。30km走や20km走などのロング走で、実際にレースで使う予定のジェルを同じ順番で摂取し、胃腸の反応や味の感じ方を確認しておくことが必須だ。特に、Maurtenのハイドロゲルは独特のテクスチャーのため、人によっては「飲み込みにくい」「喉に残る感じが苦手」といった感想もある。事前に1個だけ購入して試しておくと安心だ。
携行方法とアクセスのしやすさ
複数のブランドやフレーバーを携行する場合、どのジェルをどのタイミングで取るかがわからなくならないよう、ジッパー付きバッグに順番に入れたり、ジェルにマジックで「10km」「20km」などと距離を書いておくランナーも多い。ランニングベルトやポケットの配置も、取り出しやすさを考慮して決めておこう。
水分との相性も考慮する
ジェルは適切な量の水と一緒に摂取することで吸収がスムーズになり、胃腸への負担も軽減される。特にGUのように濃いめのジェルは、水なしだと胃もたれの原因になることがある。エイドステーションの配置を事前に確認し、給水のタイミングと補給のタイミングを合わせて計画を立てると良い。
よくある失敗とその対策
失敗1:甘いジェルだけを何個も持って行って後半に苦しむ
「練習では大丈夫だったのに、レース本番の30km過ぎで急に甘さが気持ち悪くなった」という声は非常に多い。レース本番は練習より気温や緊張度が異なるため、味覚の感じ方も変わりやすい。対策として、必ず無味またはあっさり系のジェルを後半用に1〜2個忍ばせておくこと。
失敗2:新しいブランドを本番でいきなり試す
Maurtenは「胃に優しい」と評判だが、そのテクスチャーが合わずに吐き気を催したというケースも掲示板などで見かける。必ず練習で試し、自分に合うかどうかを確認してからレースに臨むこと。
失敗3:カフェイン入りジェルを多用して胃腸を荒らす
カフェインは集中力向上に有効だが、摂りすぎると胃酸の分泌を促し、胃腸の不快感につながることがある。カフェイン入りジェルはレース全体で2個程度に抑え、カフェインレスと交互に使うのが無難だ。
味以外の「飽き」対策:補給の選択肢を広げる
ジェルの味そのものに飽きてしまう場合、補給の形態を変えることも有効な手段だ。
ドリンクミックス:MaurtenのDrink Mix 160や320は、無味に近いドリンクでエネルギーを補給できる。ジェルを飲む行為自体が辛くなった場合に、水分補給と同時にカロリーを摂取できる。
エイドステーションの活用:バナナや梅干し、飴など、レースによっては固形物が提供される。これらを気分転換に取り入れることで、甘いジェルだけに頼らない補給が可能になる。ただし、固形物は消化に時間がかかるため、胃腸が弱っている後半は注意が必要だ。
塩分タブレットや梅干し:甘さではなく塩気が欲しくなる時間帯もある。塩タブレットや梅干しを携行しておくと、味覚のリフレッシュに役立つ。
ブランド別の選び方と向いているランナー
GUが向いている人
フレーバーのバリエーションを楽しみたい
塩分も一緒に補給したい
濃いめの味で「補給した」という満足感を得たい
カフェイン入りの選択肢を多く持ちたい
SISが向いている人
胃腸が弱く、軽いジェルを求めている
さらっとした飲み口が好み
フルーティーな味が好き
水分も一緒に取りたい
Maurtenが向いている人
甘さがとにかく苦手、または後半に甘さを受け付けなくなる
胃腸への負担を最小限にしたい
無味でも問題なく補給できる
最新のハイドロゲル技術を試してみたい
購入前の確認事項とお試しのすすめ
マラソン用のジェルは、1個あたりの単価が数百円と決して安くはない。特にMaurtenは高価格帯に位置するため、いきなり大量購入するのは避けたい。以下のような方法で、自分に合うものを見極めることを強く推奨する。
スターターパックの活用:Maurten公式では、Gel 100とGel 100 Caf 100、Drink Mixなどがセットになったスターターパックが販売されている(公式価格は4,530円〜)。まずはこうした少量セットで試すのが賢い。
ランニングショップやスポーツ用品店での単品購入:実店舗では、GUやSISのジェルを1個単位で販売していることが多い。いくつかのフレーバーをバラで購入し、味比べをしてみよう。
オンラインレビューの注意点:味の感じ方は個人差が大きい。「美味しい」と評判のフレーバーでも、自分には甘すぎる可能性がある。レビューは参考程度にとどめ、実際に口にしてみることが最も確実だ。
まとめ:味のローテーションで30kmの壁を越える
マラソン後半の「ジェルが飲めない」問題は、適切な味のローテーションと事前の準備で大幅に改善できる。ポイントは以下の3つだ。
ランニングマガジンクリール 2026年 2 月号「30km走を成功させる秘訣」ランニングマガジン・クリール編集部ベースボールマガジン社2025-12-22
1. 甘さの強度をレースの進行に合わせて弱めていく
2. テクスチャーの異なるブランドを組み合わせ、口当たりの変化をつける
3. 本番前に必ずロング走でテストし、自分の胃腸と味覚に合う組み合わせを見つける
特に、Maurtenの無味ジェルは「最終兵器」として非常に有効だが、独特の食感に慣れておく必要がある。GUやSISのフルーツ系フレーバーと組み合わせることで、レース全体を通してストレスなく補給を続けられる確率が格段に高まる。
補給戦略は、ペース配分やシューズ選びと同じくらいレース結果を左右する重要な要素だ。この記事で紹介した考え方をベースに、自分だけの「勝負ジェルローテーション」を確立してほしい。
