サブ4を達成したランナーの多くが次に目指すのがサブ3.5だ。しかし、同じ練習の延長線上ではなかなか届かない。実際に「練習量は増やしているのにタイムが伸び悩む」という声は多い。サブ4とサブ3.5では、求められる走力の質が根本的に異なるからだ。
サブ4はフルマラソンを5分40秒/kmで刻み続ける持久力が主軸となる。一方、サブ3.5は約4分58秒/kmでの巡航が必要で、単に距離を踏むだけではスピード持久力が足りず、後半に失速しやすい。ここで重要になるのが、ポイント練習の割合を高め、適切な月間走行距離を設定することだ。
本記事では、サブ4からサブ3.5へステップアップするために「何を」「どれだけ」変えれば良いのかを、具体的な数値とともに解説する。
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サブ4とサブ3.5で求められる走力の違い
まずは、各目標タイムに必要な走力を整理しよう。以下の表は、フルマラソンの目標タイムと、それに対応するハーフマラソン・10kmの目安タイムを示している。これらの数字は、現在の自分の実力と目標との差を測る重要な指標となる。
| 目標タイム | フルマラソン平均ペース | ハーフマラソン目安 | 10km目安 |
|————|———————-|——————-|———-|
| サブ4 | 5分40秒/km | 約1時間48分 | 約48分30秒 |
| サブ3.5 | 4分58秒/km | 約1時間34分 | 約42分30秒 |
ハーフマラソンのタイムは、フルマラソンの目標タイムを現実的に判断するための良い目安となる。例えば、ハーフマラソンで1時間34分を切れていなければ、サブ3.5はかなり厳しいと言える。まずはこの表を参考に、自分の現在地を確認してほしい。
サブ4ランナーにありがちなのが、ロング走はこなせるがスピード練習の経験が少ないことだ。結果として、レースペースより少し速いペースでの走行に身体が適応しておらず、サブ3.5ペースで30kmを超えたあたりから脚が止まってしまう。この「スピード持久力」の不足こそが、サブ4とサブ3.5の最大の差である。
月間走行距離の目安とピーク設定
サブ4達成時の月間走行距離は、多くの場合200km前後だろう。では、サブ3.5を狙うにはどの程度の距離が必要なのか。
ある研究では、サブ4達成ラインの平均週間走行距離は約44km、サブ3.5では約70kmというデータがある。月間換算では、サブ4が約176km、サブ3.5が約280kmとなる。ただし、これはあくまで統計的な目安であり、個人差は大きい。重要なのは、ただ距離を増やすのではなく、質の高い練習を組み込みながらピーク週の距離を設定することだ。
サブ3.5を目指す場合、月間走行距離は250〜300km程度を目標にすると良い。特に、レース2〜3ヶ月前には週間70km前後をコンスタントにこなせる状態を作りたい。しかし、いきなり距離を伸ばすと故障のリスクが高まる。現在の月間距離から10%程度ずつ増やし、3〜4週間に一度は距離を落とす回復週を設けることが安全だ。
距離を踏むこと自体は基礎体力の底上げになるが、サブ3.5に必要なのは「4分58秒/kmで42kmを走り切る力」である。距離だけを追い求めるのではなく、ポイント練習の充実がカギを握る。
ポイント練習の割合を変える:サブ4からサブ3.5への転換点
サブ4までは、週1回のロング走と、あとはジョグや軽いペース走で構成されることが多い。しかしサブ3.5を狙うなら、週に2回は質の高いポイント練習を入れる必要がある。
具体的には、以下のようなメニューを週間スケジュールに組み込む。
スピード練習(インターバル):600m〜1000mのインターバルを、目標マラソンペース(MP)の110%程度の強度で。サブ3.5なら4分30秒/kmが目安。
ロングインターバルまたはペース走:2000m〜3000mのロングインターバルをMPの105%(サブ3.5なら4分45秒/km)、または20〜30kmのペース走をMPに近い強度で行う。
ロング走:30km以上の距離走。単にゆっくり走るのではなく、後半にMP付近までペースを上げるビルドアップ走や、レース後半を想定したペース走を取り入れる。
サブ4時代は、ポイント練習が週1回でも成立したかもしれない。しかしサブ3.5では、週2回のポイント練習が必須となる。これにより、速いペースへの耐性と、そのペースを持続する力の両方を養うことができる。
具体的な週間メニュー例
サブ3.5を目指すランナーの典型的な1週間のメニューを紹介する。これはあくまで一例であり、個々の体力やスケジュールに合わせて調整してほしい。
月曜:休養または軽いジョグ(30分)
火曜:インターバル走(1000m×5本、つなぎ400mジョグ、設定ペース4分30秒/km)
水曜:60分ジョグ(心拍数を上げすぎない)
木曜:ロングインターバル(3000m×3本、つなぎ800mジョグ、設定ペース4分45秒/km)またはペース走(15kmを4分55秒/km)
金曜:休養または軽いジョグ
土曜:30km走(最初の20kmは5分20秒/km、残り10kmは4分58秒/kmを目標にビルドアップ)
日曜:60分リカバリージョグ
このメニューでは、火曜と木曜がスピード系のポイント練習、土曜が持久力系のポイント練習となる。週間走行距離は約65〜70km程度になる。
重要なのは、ポイント練習の前後には十分な回復を取ることだ。疲労が溜まった状態で質の高い練習をしても効果は半減する。また、体調や天候に応じてメニューを柔軟に入れ替えることも必要だ。
サブ3.5達成に効果的な練習の種類と強度
サブ3.5を目指す上で、特に効果が高いとされる練習をいくつかピックアップする。
閾値走(Tペース走)
閾値走とは、血中乳酸が急激に蓄積し始める直前のペースで20〜40分間走り続ける練習だ。サブ3.5ランナーの場合、1kmあたり4分40秒〜4分50秒程度が目安となる。この練習により、乳酸を効率的に処理する能力が向上し、レース後半の失速を防ぐことができる。週に1回、ペース走の代わりに取り入れると良い。
30km走の質を高める
サブ4を目指していた頃は、30km走を「とにかく完走すること」が目的だったかもしれない。しかしサブ3.5では、30km走の内容を変える必要がある。具体的には、以下のようなバリエーションを取り入れる。
後半ペースアップ:20kmまではイーブンペースより10〜15秒遅く入り、残り10kmをMPより5〜10秒速く走る。
レースペースでの30km走:本番の4〜5週間前に、30kmをサブ3.5ペース(4分58秒/km)で通して走る。これができれば、本番での自信に繋がる。
変化走:5kmごとにペースを変え、MPより速い区間と遅い区間を設ける。身体にスピードの変化を覚えさせる効果がある。
筋持久力の強化
サブ4ランナーがサブ3.5を目指す際、意外と見落としがちなのが筋持久力だ。長い距離を走り切る筋力が不足していると、後半にフォームが崩れてロスが生じる。LSD(ロング・スロー・ディスタンス)や、2〜3時間の長時間走を定期的に行うことで、筋持久力を高めることができる。ただし、LSDだけではスピードが養われないため、他のポイント練習とのバランスが大切だ。
適正月間距離の計算式:自分に合った距離を見つける
「適正月間距離」とは、自分の目標や生活スタイルに合った無理のない月間走行距離のことだ。以下の計算式を参考に、自分に合った距離を設定してみよう。
適正月間距離 = 目標週間距離 × 4.3
目標週間距離は、現在の走力や目標タイム、使える時間から逆算する。サブ3.5を目指すなら、週間距離は60〜75kmが目安となる。例えば、週間距離を70kmに設定した場合、適正月間距離は70 × 4.3 = 301kmとなる。
しかし、いきなり300kmを走る必要はない。現在の月間距離が200kmなら、まずは230km、260kmと段階的に増やしていく。距離を増やす際は、以下の点に注意しよう。
3週間増やしたら1週間は距離を落とす(回復週)
距離の増加は週に10%以内に抑える
疲労が抜けない、睡眠の質が下がったと感じたらすぐに距離を減らす
距離はあくまで目安であり、質の高い練習ができていれば、必ずしも300kmにこだわる必要はない。週に2回のポイント練習をしっかりこなし、ロング走で30km以上を走れていれば、月間250kmでもサブ3.5は可能だ。
本番でペースが崩れる原因と対策
サブ3.5を狙うレースでよくあるのが、30km以降の失速だ。その原因と対策を整理する。
オーバーペース
スタート直後の興奮や周囲の流れに乗って、目標ペースより速く入ってしまうケースが多い。サブ3.5の場合、最初の5kmは4分58秒/kmより5〜10秒遅く入るくらいでちょうど良い。GPSウォッチのラップ機能を活用し、1kmごとにペースを確認する習慣をつけよう。
補給不足
30km以降の失速は、エネルギー切れが原因のことも多い。レース前のカーボローディングに加え、レース中は30分おきにジェルやバナナなどで補給する。特に、後半に向けてエネルギーを蓄える意識が重要だ。
メンタルの弱さ
「あと12kmもある」と思うか、「残りはハーフマラソンより短い」と思うかで、感じ方は大きく変わる。事前にコースを把握し、5kmごとのラップ目安を頭に入れておくことで、精神的な余裕が生まれる。
5kmごとのラップ目安
サブ3.5(3時間29分台)を達成するための5kmごとのラップ目安を以下に示す。イーブンペースで走る場合の参考にしてほしい。
| 距離 | スプリットタイム | 累積タイム |
|——|—————-|———-|
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| 5km | 24分50秒 | 24分50秒 |
| 10km | 24分50秒 | 49分40秒 |
| 15km | 24分50秒 | 1時間14分30秒 |
| 20km | 24分50秒 | 1時間39分20秒 |
| 中間点 | – | 約1時間44分45秒 |
| 25km | 24分50秒 | 2時間04分10秒 |
| 30km | 24分50秒 | 2時間29分00秒 |
| 35km | 24分50秒 | 2時間53分50秒 |
| 40km | 24分50秒 | 3時間18分40秒 |
| ゴール | 残り2.195kmを約10分50秒 | 3時間29分30秒 |
この表をレース前にイメージしておくだけでも、ペース配分が格段に安定する。特に、30km地点で「まだ余裕があるか」を確認し、余裕があれば残り12kmで少しペースを上げることも可能だ。
サブ3.5達成に必要な期間とステップアップの考え方
サブ4からサブ3.5までの期間は、個人差が大きいが、一般的には3ヶ月から半年程度と言われている。ただし、これは継続的に質の高い練習を積めた場合の話だ。仕事や家庭の事情で思うように練習できない場合は、さらに時間がかかることもある。
焦らずに、まずはハーフマラソンで1時間34分を切ることを中間目標にすると良い。ハーフマラソンでこのタイムが出せれば、フルマラソンでのサブ3.5は現実的になる。
また、サブ3.5を達成した後は、サブ3.25やサブ3といったさらに上の目標が見えてくる。その際にも、今回解説した「ポイント練習の割合を高め、適切な距離を踏む」という基本は変わらない。強度と距離を段階的に上げていくことで、更なる記録更新が可能となる。
よくある質問
Q. サブ4からサブ3.5を目指すのに、月間走行距離は最低どれくらい必要ですか?
個人差がありますが、250km前後は確保したいところです。ただし、距離よりも週2回のポイント練習を継続できるかが鍵です。距離が少なくても質の高い練習ができていれば、達成できる可能性はあります。
Q. スピード練習が苦手なのですが、どのように取り入れれば良いですか?
最初は無理に速いペースで行う必要はありません。例えば、400mを少し速めのジョグくらいの感覚で走り、それを数本繰り返すところから始めましょう。慣れてきたら徐々に本数やスピードを上げていきます。
Q. 30km走は月に何回行うべきですか?
レース3ヶ月前から、月に2〜3回を目安に取り入れると良いでしょう。ただし、毎週行うと疲労が抜けずにオーバートレーニングになる恐れがあるので、隔週程度が安全です。
Q. ポイント練習とロング走は同じ週に行っても大丈夫ですか?
可能ですが、間に回復日を挟むことが大切です。例えば、火曜にインターバル、木曜にペース走、土曜にロング走といったスケジュールなら、間の水曜と金曜を軽いジョグか休養に充てることで、質を落とさずにこなせます。
Q. レース前のテーパリングはどのように行えば良いですか?
レース3週間前から徐々に距離を落とし、最終週は週間距離をピーク時の40〜50%程度にします。ポイント練習の強度は維持しつつ、量を減らすことで、疲労を抜きながらもスピード感覚を失わないようにします。
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まとめ:サブ3.5は「質」への転換で掴む
サブ4からサブ3.5へのステップアップは、単なる距離の積み増しでは達成できない。必要なのは、ポイント練習の割合を増やし、スピード持久力を高めることだ。月間走行距離は250〜300kmを目安に、週2回の質の高い練習と、30km走の内容充実がカギを握る。
自分の現在地を把握し、無理のない計画で練習を積み重ねていけば、サブ3.5は決して遠い目標ではない。本記事で紹介したペース表やメニュー例を参考に、ぜひ次のレースでの自己ベスト更新を目指してほしい。
