【体験記】100kmウルトラマラソンを完走した練習と装備のすべて

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【体験記】100kmウルトラマラソンを完走した練習と装備のすべて
42.195kmの先にある世界

フルマラソンを走りきったとき、多くのランナーが一度は思う。「この倍の距離を走る人たちは、いったい何者なんだ」と。私もそのひとりだった。制限時間ぎりぎりでフィニッシュしたホノルルマラソンのあと、ビーチに寝転がりながらスマホで見つけた「サロマ湖100kmウルトラマラソン」の文字。そこからすべてが始まった。あれから3年、私はいま国内のウルトラマラソンを4大会完走している。この記事では、実際に100kmの道のりと向き合って得た、練習法や装備、補給のこと、そして心の動きまでを包み隠さず書いていく。これからウルトラに挑むあなたの、背中をそっと押す言葉になればと思う。

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フルマラソンとは別競技だと思い知らされた最初の60km走

ウルトラに挑むなら、まず月に一度は60kmのロング走を入れるといい。これは多くの先輩ランナーが口をそろえて言うことで、私も素直に従った。初めての60km走は5月の連休中、自宅から川沿いをひたすら往復するルートを選んだ。30kmまでは快調だった。いつものロング走と変わらない。しかし40kmを過ぎたあたりで異変が起きた。足裏全体がじんじんと痛みだし、腰のあたりに重だるさが溜まっていく。50kmに達した時点で、コンビニの軒先に座り込んで動けなくなった。

このとき痛感したのは、フルマラソンとウルトラでは求められる筋肉が根本的に違うということだ。フルはスピードを支える速筋寄りの持久力だが、ウルトラはひたすら同じ動きを繰り返す遅筋の耐久力がモノを言う。座り込んだまま、私はスマホで「ウルトラマラソン 後半 痛み 対策」と検索していた。そして知ったのが「7分30秒/kmのジョグペースを染み込ませる」という考え方だ。これより速く走る必要は一切ない。むしろ「遅く走り続ける技術」こそがウルトラの核心だった。

初心者が陥りがちな大会選びの落とし穴

私の初ウルトラはチャレンジ富士五湖の100km部門だった。富士山が見える絶景、湖畔の涼しい風、距離別に62kmから118kmまで選べる間口の広さ。評判を聞く限り「初心者向け」とあったので、深く考えずにエントリーした。ところが、この選択は甘かった。河口湖、西湖、精進湖、本栖湖とめぐるコースはたしかに美しいが、後半にアップダウンが連続する。とくに70km以降の西湖周辺の丘陵地帯で脚を完全にやられた。結果的に57km地点の関門にわずか3分間に合わず、涙のリタイア。美しいコースほど、実はタフなアップダウンが隠れている。富士五湖は「景色に騙されるな」が合言葉だと、あとで知った。

では、本当に初心者が最初に選ぶべき大会はどこか。断言できるのはサロマ湖100kmだ。北海道の広大なオホーツク海沿いを走るこの大会は、高低差が極めて少なく、気温も本州より低めで走りやすい。何より「ウルトラの聖地」と呼ばれる理由は、地元住民による私設エイドの充実ぶりにある。スイカ、おにぎり、冷たいおしぼり、ときには「頑張れ」と肩を叩いてくれるおばあちゃんまでいる。初めて完走したのがこの大会で、あの沿道の温かさがなければゴールできなかったと本気で思う。

装備で失敗して這うように走った夜

ウルトラマラソンでは、夜間走行が避けられない大会が多い。朝5時にスタートして制限時間14時間の場合、終了は19時。だが初心者や後方集団では20時を過ぎることもざらだ。私が2回目の挑戦で選んだ飛騨高山ウルトラマラソンは山岳コースのため、丸一日かかる前提だった。問題はヘッドライトだ。ホームセンターで買った2000円程度のものをそのまま持っていったのだが、これが暗すぎて足元の砂利すらまともに照らせない。トレイル区間で木の根につまずき、膝を強打した。幸い骨折は免れたが、あのまま続けていたら崖から落ちていたかもしれない。

いま使っているのはペツルの充電式ヘッドライトで、明るさは300ルーメン以上ある。多少値は張るが、命を預ける道具だと割り切った。もうひとつ重要なのがランニングベストだ。フルマラソンではウエストポーチで済ませていたが、ウルトラでは水やジェル、防寒着、予備バッテリーを入れるためベストが必須になる。私はサロモンのアドバンススキン12を愛用しているが、胸元のポケットにスマホとジェルを入れられ、背面には1.5リットルのハイドレーションを収納できる。これがなかったら、補給のたびに立ち止まってザックを下ろす羽目になり、大幅なタイムロスになっていただろう。

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補給は「空腹」を感じる前にやる

ウルトラマラソンの完走を左右する最大の要素は、じつは脚力でも心肺機能でもなく「胃腸の強さ」だと私は思う。飛騨高山の70km地点、エイドで振る舞われた飛騨牛の串焼きに手を出したのが運の尽きだった。脂っこさに胃が驚いたのか、そのあと5kmほど吐き気と闘いながらの行軍になった。せっかくの名物エイドも、胃が受け付けなければ意味がない。

いまの私の補給ルールはシンプルだ。10kmごとにエナジージェルをひとつ、その間に塩タブレットを2粒、水はこまめに飲む。固形物をとるなら15km以降の胃が落ち着いているタイミングで、おにぎりやバナナなど消化にいいものだけにする。空腹を感じたときにはすでに遅い。血糖値が下がり、判断力も落ち、気持ちまで沈んでしまう。「とにかくカロリーを入れ続ける」この一点が完走の生命線だ。

レース後半、自分との対話がはじまる

80kmを超えたあたりから、時間の流れが変わる。周囲のランナーも無言になり、ただ自分の足音と呼吸だけが聞こえる。足の痛みも、腰の張りも、もはや当たり前になりすぎて気にならなくなる。不思議なもので、このあたりから思考が研ぎ澄まされてくるのだ。「なんで俺はこんなことをしているんだろう」「来年は絶対やらない」と思いながら一歩を踏み出す。でも同時に、「あと少しで終わる」という寂しさも芽生える。この相反する感情の揺れこそがウルトラの真髄だと、私は思っている。

サロマ湖のラスト10kmはオホーツク海沿いの一直線だった。日は沈み、ヘッドライトの列が点々と続く。その光景を見たとき、不意に涙が出た。痛みとも辛さとも違う、ただただ「自分はここまで来たんだ」という実感だけがあった。

ウルトラマラソンに向いている人、向いていない人

これからウルトラに挑む人に、ひとつだけ正直に伝えたい。向き不向きは、体力以上に「性格」で決まる。一人で淡々と作業を続けるのが苦にならない人、目先の結果より長い積み重ねを楽しめる人は、まず間違いなくウルトラに向いている。反対に、タイムを追い求めたい人や、単調な動きが嫌いな人は、おそらく途中で心が折れる。実際、私の周りでも月間走行距離400kmを超える実力者が、ウルトラだけは「性に合わない」と一度で辞めてしまった。

また、家族や職場の理解も欠かせない。週末に5時間以上も練習に費やし、大会前後は疲労で休日を潰すことになる。私の場合は事前に「来年の春だけは趣味に集中させてほしい」と家族に相談し、スケジュールを共有している。これがないと、家庭もレースもどちらも中途半端になる。

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それでもあなたに伝えたい、一歩踏み出す勇気

ウルトラマラソンは、けっして特別な人だけの競技ではない。月間200kmの走り込みと、週末のロング走、適切な装備と補給計画を整えれば、完走の可能性は誰にでも開かれている。私自身、初めて100kmを完走したときのタイムは13時間8分。誇れるような記録じゃない。それでも、あの日の感動は何物にも代えがたい。「フルマラソンが短く感じるようになる」とよく言われるが、本当にそうなった。距離の感覚が変わるだけでなく、自分の限界そのものが書き換わるのだ。

最初の一歩は、たぶん怖い。でも大丈夫。痛みも、失敗も、すべて含めてウルトラはあなたを待っている。いつかどこかのゴールで、ヘッドライトの灯りを揺らしながら、一緒に笑える日を心から楽しみにしている。

[紹介元] マラソン速報 【体験記】100kmウルトラマラソンを完走した練習と装備のすべて
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