ウェッジを5本入れていたの目的は、140ヤード以内のフルショットのピッチを狭めてバーディチャンスを増やすことでした。しかし、石川遼自身は「62度のフルショットの強みを出せていなかった。ショートサイドのバンカーくらいでしか(62度は)生きなかった」と語っています。さらに、グリーン周りでも30〜40ヤードくらいのランニングアプローチを52度や57度で打っていた際に距離感の調整に苦労していたそうです。
今年のクラブセッティングで石川が一番こだわったのは“58度”を入れることでした。「生まれながらじゃないですけど(笑)、ずっと58度1本でやってきたので、ランニングアプローチの距離感をどうしても58度で出したかったんです」とのこと。そのため、58度を軸として、4度ピッチで54度、50度、46度(PW)を入れることを決めました。石川はオフの期間中に距離感の調整を重ねて、3つのロフトをバッグに入れるのは初めてだったそうです。
58度については、同じロフトでバンス角の違う12種類ものソールを打ち比べ、バンス8度を選んでいます。石川は低い転がしのランニングアプローチを一番使うため、直感的に距離感が合ったバンス8度を選んだとのことです。昨年までグリーン周りでは52度、57度、62度の3本を持っていたのに対して、今年は「58度で転がしもロブも全部やる。クラブで悩むことはなくなりました」と笑顔で話しています。
石川遼のこだわる58度のランニングアプローチは独特です。通常はロフトが立ったクラブを使ってトロトロと転がすのですが、石川はボールを右足寄りに置いて、上からガツンと突っつくように打つスタイルを取っています。この打ち方により、スピンの利いた低い球が勢いよく飛び出し、ブレーキがかかりながらピンに寄っていくそうです。ジャンボ尾崎が得意としていたアプローチに近いかもしれませんね。
アプローチの軸を58度のランニングに据えた影響はボールにも現れています。昨年まで使っていた『クロムソフト X LS』の後継『クロムツアー』ではなく、少しスピンが入って出球が低くなる『クロムツアー ドット』
